インサイト分析をビジネスの力に

顧客起点のマーケティング〜顧客分析のヒント

僕のビジネスの根っこは、その大部分がリテール(小売業界)です。
ビジネスマンとしての70%はエレクトロニクス業界で店舗開発やマネジメント、セールスの育成、BtoC、D2CのECサイト運営などの経験を積んできました。

僕はそこから、晴れてBtoBの業界へ飛び込んだのですが、そこで見たものはまさに「顧客不在の戦略」でした。

”商品ありき”から始まる悪い癖

有名な投資家のデイブ・マクルーアの言葉に
「顧客はあなたのソリューションに興味はない。 興味があるのは、顧客自身の課題だ」というのがあります。

しかし、そのBtoB企業ではまず自社の商品ありきで考えられ、「売れないのは商品が悪い」「営業力が低いのが悪い」という決めつけがありました。
決して、取り扱っているプロダクトの打ち出し方が自社の顧客視点に合わないからとは考えなかったわけです。そのため、マーケティングも経営も顧客が不在で、その手段が重要と思われていて、組織にも分断が生じていました。

話は変わって、これはマーケティングでよく用いる顧客ピラミッドです。上から、上得意、顧客、顕在顧客、潜在顧客、無関心顧客と全部で5つのセグメントに分かれています。

5セグメントの顧客ピラミッド

大抵の企業はこの中の上位3セグメントしか認識しておらず、潜在顧客や無関心顧客については打つ手なしと捉えられています。

しかし、この下位の2セグメントを認知できていないと、会社の売上は既存顧客頼みとなってしまいます。

たとえば、常に上位3セグメントの顧客に依存した売上計画を立てていると、ある年たまたま他社へ浮気する顧客が出たり、予算の都合で買ってくれない顧客がいると、その年の業績は明らかに落ちてしまうことになります。

下位の2セグメントを認知し、施策を打っておけば、業績低下を免れるかもしれません。

今回は、この下位2セグメントを取り込んでいくための戦略について、記事を書いていきます。

市場普及の論理

商品・サービスを発売した直後の上位3セグメントは、エベレット・M・ロジャーズの提唱した「イノベーション普及学」で指すところの イノベーターアーリーアダプター が大半を占めます。

イノベーターやアーリーアダプター

イノベーター とは情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層です。市場にまだ普及していないコスト高な製品やサービスであっても、価値観に合致した物であれば買ってくれます。

そして、アーリーアダプター とはこれから普及するかもしれない製品・サービスにいち早く目をつけて、購入するユーザーのことを指します。これらの層は市場の約16%を占めると言われています。

まさに、”商品ありき”に飛びついてくるユーザー層とも捉えることができます。しかし、初期市場を攻略するだけでは、キャズム にハマってしまうことになります。 キャズム とは、初期市場と メインストリーム の間に生まれる溝のことを言います。

その事業を安定路線に乗せていく( メインストリーム に乗せる)ためには、その次の2セグメントに存在する アーリーマジョリティレイトマジョリティ を獲得することが重要です。残念なことに、多くの企業がこの層を獲得できずに商品を諦めてしまうケースが目立ちます。

アーリーマジョリティ

アーリーマジョリティ とは、情報感度は比較的高いものの、新しい商品・サービスの採用に慎重な層のことで、市場全体の34%程度を占めていると言われています。価格ドットコムなどで盛んに口コミを調査して買う方などはこれに当たります。

レイトマジョリティ とは新しい商品・サービスについては消極的で、なかなか導入しない層です。アーリーマジョリティー と同様に市場の34%程度を占めていると言われています。

この層は、多くのユーザーがこの商品・サービスを採用していて、導入することが多数派に入ることだと確証を得てから採用する層です。よく、新しい商品が発売すると、それは飛ばして安定した次世代目を購入するのがこの層です。

言うまでもなく、キャズム が発生してしまう要因はこのセグメントの境界にある価値観の違いにあるのです。そしてその先の層である ラガード を含めると、メインストリーム だけで市場の約84%を占めると言われています。

5つの戦略に取り組む

以下は以前、BtoBにおいて、このピラミッドの5つの層を認知・攻略する為に僕が作成した図です。

5セグメント別攻略ピラミッド

マーケティングではこのピラミッドのようにユーザー層を分類し、それぞれ下位のユーザー層に上位への階段を登らせる施策が必要です。
たとえば、一番下の無関心顧客(Indifferent)は、まだ商品のニーズはおろか、問題意識も芽生えていない状態です。そして2段目の潜在顧客(Potential)は、問題意識は持っていてもその解決方法までたどり着いていないユーザーです。

この下位2層に必要なことは、まず、自社(自分)に課題があることを認知してもらい、その解決方法があることをアピールしなければなりません。

現在自社(自分)には無い新しい価値観に触れてもらい、「そうなりたい」と思わせることです。そのような感情が湧き出てくれば、あとはそこにどんな解決方法があるのかを知ってもらうだけです。

白く洗浄できる洗剤という体験

たとえば、あなたが他社よりも服を白く洗浄できる洗濯用洗剤を作っているとしたなら、この層にはシャツが透き通るように白くなると、そこにどんな素晴らしい体験があるのかをアピールしなければなりません。

しかし、ここからが落とし穴で、ここを間違えてしまうとキャズムを超えることはできません。

もしかすると、上位3層の イノベーター や アーリーアダプター は、ただ他社製品よりも白く洗浄できることに喜びを感じるかもしれません。それはその製品の機能的価値に共感を抱いているからです。

しかし、その先の層が同じ価値観を持つとは限りません。むしろ、「そんなに白く洗えなくても今のままで満足している」と考えるかもしれません。

ですから、キャズム を乗り越えるためには、顧客視点を再構築する必要があるんです。

キャズムを超える価値付けとは

実はこの例は、ある洗濯洗剤のメーカーで実際にあった話です。

よく洗えたの答えは「香り」

このメーカーがユーザーリサーチで「何をもってよく洗えたと感じるのか」を調査したところ、答えはその「香り」にありました。ユーザーが「きれいに洗えた」を認識する瞬間は、実は干した後の洗濯物の匂いにあったのです。

この洗濯用洗剤メーカーはこの結果を元に、「匂いのもとになる菌まで落とす」としたことで商品を メインストリーム に乗せることに成功したのです。

同じように、顧客のインサイトを知ることでビジネスを変えた事例が紹介されています。

このキャズムを超えた後は、顕在顧客(Prospect)から顧客(Customer)になってもらうために、自社と他社の商品を比較できる情報を、宣伝者(Royal customer)には自社製品を選び続けてもらうためのメリットを訴求していきます。

概念だけでは真実は見えない

以上のことで、概念だけは理解してもらえたかもしれません。
しかし、実践は概念だけで乗り切ることは難しく、もっと顧客一人ひとりに深く入っていくことが重要です。

たとえば、ロイヤルカスタマー だからといって、必ずしも他社に負けない機能的価値を求めているとは限りません。

概念だけでは真実は見えない

昔あるSNSサービスは、他社が訴求してくる最新技術を機能に盛り込んだあげく、ロイヤルカスタマーの離反を生むことになりました。なぜなら、ロイヤルカスタマー は他社とは違ったアプローチをしているサービスの現状に満足感を抱いていたからです。

一人ひとりの感情的な部分までしっかりと見て投資をしていけるかどうかで、プロダクトは成長もすれば衰退もします。一度 メインストリーム に乗ったからといって、それが永遠に続くわけではないんです。

そんな表層的には見ることが難しい ユーザーインサイト をしっかりと把握していくためにも、適切なツールの導入・運用が必要です。

この記事を書いた人

はじめまして、僕はアシマと申します。一部ではサイト管理者と激似との噂もありますが、ご存知の方はくれぐれも内密に。
ビジネスにお役立ていただける記事をどんどん書いていきますので、宜しくお願いします。

▼アシマの中の人の略歴

  • 学生時代には経営・財務の分野を学び、建設・不動産業界で経理部に在席。
  • 家電メーカーにて直営店舗の運営、マーチャンダイザーを経験。PCのBTOビジネス推進や、デジタル一眼カメラのセミナー講師、直営の免税店を経験。
    また、グループ企業のWebマスターとして、ポータルサイト、eコマースサイトの制作・運営、情報セキュリティマネジメント、ナレッジマネジメントを推進。
  • 神奈川県の家電量販店にて情報部門リーダー、都心店舗の店長を経験。
    その後、店舗開発部で新店舗出店時のレイアウト設計やスタッフの育成、出店準備、VMDの企画・制作などを歴任。
  • システムインテグレーターとして、手術室及び血管造影室の画像・映像配信システムの開発・設計、エンジニアリングを担当。さらに、遠隔手術支援システムの企画・開発を担当し、専門誌へ医師の偏在問題に関する論文を寄稿。
    また、医療向けシステムやフェリーの設備を安全にリモートメンテナンスするソリューションを開発・運用。
    その後、会社のリブランディングプロジェクトへの参画、デジタルマーケティング組織の立ち上げ、メディカル組織のマネジメントを経験。
  • 現在はクラウドサービスの開発会社でマーケティングディレクターとして、導入企業様のコンサルタントを担当しております。